不況が深刻では有りますが、基礎的学習も大事です。

 前回までの投稿で、景気政策の有り方について一応の説明を試みました。

 今日のニュースでも派遣社員が解雇され住む所も無い等、深刻なニュースが多く見られます。



 投稿者は以前より別サイト等でも言ってきましたが、投稿者が“未だ若かった“頃と比べて“時代が悪くなっている“としか思えない状況が続いています。政府は当然責任を負うべきと考えますが、それを支えるべき“優秀な“官僚諸氏にも責任が無いとはいえない状況だと思います。



 しかし、一概にここで苦情ばかり述べていても生産的では有りませんので医学に於いても“基礎“が大事であるように、経済学、政策においてもやはり、基礎は大事であるというべきでありまして、投稿者はそこに関連あると思われる部分につき自分としても勉強を進めたく思って居る所です。






 そういう点では別サイトでも述べましたが“古書店街“の効用は大きいと言うべきでありまして、投稿者も都内の古書店街を中心に足しげく通っている所であります。そのなかで将来的に何らか政策面、理論面に役立ちそうな古書店で見つけた本や又そのテーマ等若干考えていますのでそれについて今後暫く投稿したいと思います。


又、コメントが全然有りませんので是非私見、謬見なんでも結構ですので宜しくお願いいたします。








次回へ

景気政策入門講座−12 現状での基本認識と政策提案の基本方向−3

前回までで現在の問題である景気政策の基本方向について述べて来ましたが、若干の読者の方々もお気づきと思いますが、“国際協調“の有り方について、若干の方向性について補わなければならない事が有ると言う事です。




▼国際間の“国際収支と金融政策−金利政策のあり方▼




 つまり、多くの方もお気づきと思いますが、アメリカを中心としたこの世界経済の有り方として、ご存知のようにアメリカは膨大な貿易赤字を中心にした国際収支の赤字を出しています。


又これは何方も解ると思いますが、国際収支の赤字は何らかの形で埋められなければならないという事です。


現状の世界経済はアメリカを中心に、日本、中国、EU等の産業センタ
ーから成り立っています。

貿易赤字について言えば最近についてはそれらの地域が黒字を抱えるという構造になっていると言う事です。


従ってご存知のように日本を筆頭にその経常収支を埋める為に“資本収支で黒字を構成する“という構造になっていると言う事です。

統計データは沢山あると思いますが一つだけ掲げておきます。
財)国際貿易投資研究所 国際比較統計
http://www.iti.or.jp/


 

そこから問題になるのは資本収支は“基本的に“金利差に大きく反応するという事です。従って今回の不況のような時にアメリカが“低金利“の方向を採ると他の経常収支黒字諸国はそれよりも“低い“金利を要請される事になり、つまりは、政策手段が制限されるという事になります。


ここから言える事は、国際的協調と言う時になるべく“アメリカに金利政策以外の手段“を使うように働きかける必要が有ると言う事です。
これはこれまで述べてきましたような方策を採れば財政政策を取る事が可能である事は読者諸氏もお分かり頂けると思います。




又、“短期的資金“の動きに対しては、“トービン税“のような手段を講じ、撹乱を防ぐ事が必要でしょう。これらは、何の“学派“であっても、経済学が“科学“である以上、取るべき手段には合意が可能であると思います。





・・国際競争力は強ければいいか?・・・

 これらは更に考えるなら各国の“内需“喚起の課題にも結びつく問題であり、世界的な経済構造全体の問題にも関係する問題では有り、それらも考えながら全体の均衡をも考える必要が有ると言うべきでしょう。

 つまる所、“国際競争力“とは何か?という問題にも関連します。つまり金本位制等の元では輸出によって稼いだ外貨(金)はその国に持ち帰れますが、現在のような“国際的不換制 ドル(ユーロ)本位制“の元では
貿易黒字は、

①為替の上下によって調整されてしまうか
(その場合、輸出企業は大きな変動に曝される事になりますが)
②反対側の資本輸出等により“相殺“される必要が有る。

という事になり、“強ければよい“という事にはならないわけです。詰まる所、“国際競争力“の国際的調整が必要であるという事です。







これら金利調整や前項での税源確保策等の“国際協調“が不調におわれば、負担の押し付け合い、市場の狭般化等により、不況の長期化や又昨今の日銀が国債買入れを多くしたり又CPの買入れを行っているように極めて危険な道に行く可能性が大であると言うべきでしょう。







▼自然環境問題 温暖化防止策は緊急な課題▼

 

 更には、愁眉の課題である地球環境問題でのCO2削減等の課題の遂
行に重大な障害が生まれるというべきで全く危機的状況としか言いようが有りません。

 IPCCの4次報告でも今世紀末、2℃の上昇で生物の1/3が絶滅するとも言われています。(同報告では最大6℃以上も上がる可能性があるとしています)緊急な手が打たれなければ大変な事態になる可能性が否定できません。


 地球環境問題では“消費社会“とは何であるか?つまり必要以上に生産していないか?

もし本当に必要なだけ生産するなら総労働時間ももっと短縮出来る訳ですし、そうすれば“自分の生活“という所に使う時間も増やす事が可能であると思います。つまりは大きく言うなら“人生とは何か“という問題にも行き当たる事になるわけです。その有り方も考える必要が有るという事になるでしょう。


 




又、“消費社会“と言われる一方で一日一ドル未満で暮らす人々がこの地球上で約十一億人 五人に一人 と言われています。この問題と上記環境問題をリンクさせ解決させなければならないのが現在の我々の課題であります。一つの参考データとして日本で一番の資産家の総資産は約七千億円とも言われています。我々がこの問題をどう捉えるべきか迫られている問題では有ると思います。

 “経済学的に“考える事が肝要であると思います。つまりは基本は“等価交換“そして“貸したお金には一般に利子が付く“という事でしょうか?

 又、しかし私企業に調整できないものを調整するのが政府や関連国際機関でしょう。







尚、参考文献は色々挙げられる事が出来るとは思いますが、下記の物を一応挙げさせて頂きます。



マルクス資本論
ケインズ:雇用・利子及び貨幣の一般理論
岡本正他:経済原論講義
林田睦次:ケインズ[一般理論]研究50年史
林保美:サプライサイド経済学
松村文武:債務国アメリカの構造
又、特に参考文献は挙げませんが、一般に特に近代以降の経済史的事実は前提になると思われます。







 それらの事を最後に指摘させて頂いて本稿を終了させて頂きたいと思います。尚、途中他にも書かなければならないことも有りましたが、なるべく“自分の頭で考える“という事を基本に皆さんに考えて頂きたいと思います。

景気政策入門講座−11 現状での基本認識と政策提案の基本方向−2

 政策提案の基本方向の一回目で、まず、財(物)市場(概ね的にはGDP)と金融市場の成長アンバランスを国際協調を旨としながら克服しなければならない事を述べました。


第9回の投稿で物市場の一般的供給能力過剰状態を克服する為の方策について述べました。
その方法としては、

所得税累進の強化
社会保障整備を行う事

これらを実施する事により、一般的“消費性向“を上げ、需要を拡大する事が可能な事を述べました。又そこにおいては一定の予算組み替えも必要である事も述べました。(不急な軍事費の削減、過度に作り過ぎている空港等 例えば採算が危ぶまれる関西等 の予算を削減し教育費等に振り向ける。)



又、中期的にはやはり国際協調を旨に財政再建が可能である事も述べ、又それは日銀等中央銀行の“国債買取“等の“危険な道“を防ぐ事につながってく事についても述べました。


ここで失業が拡大して行くであろう事も考えながら、政府による一定の
“産業誘導“−“投資誘導ないし拡大“の道について考えてみたいと思います。





社会保障、雇用拡大、環境保護になる“産業“への投資へ▼


 不況状態と言っても“投資“が全然無くなる訳では当然無いと言う事が一般的でありますから、何らかの新規投資はある事になります。

そこで、投資を行い産業を興してゆくなら不況時には、

①雇用効果が大きい物

②社会に直接役立つ分野

③一般的に”物 市場”(生産能力)は供給能力過剰であるので、”サービス的分野”への投資に振り向ける事が必要と思われます。
(第6回投稿参照)




である事が望ましい事は言うまでも無い事でしょう。
しかし“投資“自体が民間で行われるものが多い訳ですから一般的“倫理観“だけに訴えて決定するわけには行かないでしょう。

政府が行うのであれば社会的目標で行う事も可能と思われますが。




そこにおいて、民間企業がやっても採算が取れる分野と言う物が基準になると思われますが、そこにおいて政府が上記予算組み換え等行いながら産業を上記①、②、③を満たす分野に誘導すると言う事が考えられます。

・・・財源論として・・・

なにをやるにもお金が掛かりますから、この場合も予算が当然必要なわけでそれについては、

イ)上記で述べました“予算組み替え“
ロ)法人税率は“国際協調“があるまで弄れないとするなら、(但し大規模企業等に一定の付加税を負担してもらうのは可能かもしれませんが)、富裕階級(年収数億円と言うような人々)に有る程度の超過的所得税を負担して頂くのも考えと思われます。これは以前から言っていますように“倫理観“の問題では無く、過度になった金融資産を削減する一方策でもあります。


 余談になりますが、一般的に所得税等“累進税“と思われて右肩上がりの税率曲線になっていると思われていますがこれは既に1970年代からの研究で大よそ年間収入数千万円の人々から上の収入の人々の税率は逆に右肩下がりとなっている事が一貫して証明されています。
これは証券収入等の“分離課税“の制度による物です。
(参照:都市財政改革の構想、現代の財政、経済財政ハンドブック)





 上記等により予算も確保しながら、雇用確保につながり又社会保障
もなる分野に投資を誘導すると言う事ですがこれについては、やや意外な考えと思う方もいらっしゃるかも知れませんが、“社会保障分野“も“産業“であると言う事です。

社会保障と言うと何らか“消耗的 非生産的“なものと考える方も多いのですが、“軍需産業“と言う言葉も有るように国民にとって必要な物であり、“産業的効果“のあるものはやはり“産業“である訳です。



つまり、社会保障に“投資“する事で当然雇用効果もありますし、またそれは国民生活に直接役立つ訳です。雇用効果について言えば社会保障分野は雇用効果が極めて他産業に比べて大きいというデータも多く有ります。

“厚生労働白書“等でもデーターが出されていますが、“雇用誘発効果“について

他産業に比べ

介護が順位①位
社会福祉が③位
保健衛生が⑧位

となっており介護等は通信等に比べ5倍近い雇用誘発効果があるとされています。 (全56部門中  平成20年版厚生労働白書 P30)

これは他の所でも多く出されている物であり、特に不況の克服の為にも有意な産業であるといえると思います。



これらは、不況時の対策としての一般的インフラストラクチャに投資する(公共事業への投資)という固定概念を応用的に考える事も必要である事を示しています。






 又、投資機会を失っている(需要見込み)という事で言うなら環境保護技術産業も危急に求められる将来有望な産業であると言うべきで、政府は積極的に産業誘導すべき(税制優遇等もしながら)であると思われます。これらの産業誘導には費用がかなり掛かる事も明らかで、”国際協調の成否”に掛かっていると言っても過言ではないでしょう。




これら”社会保障産業等”への投資は予算手当等しながら行けば国民内に於いても当然、需要も強いものであり、”成長産業”になる事が見込まれます。






▼但し、“一般的な“物生産の為の投資は二重の効果を持ちます。▼


これは何かと言えば”投資”それ自体は”需要”になりますが、しかし
それは完成されれば”供給能力”となるのであり、ある意味不況状態に拍車をかける事となります。(こういう事を経済学的用語では”投資の二重効果”と呼びます。)


従ってよくある一般的な”物 産業への優遇 投資優遇(減税等)”は逆効果になる可能性が否定できない事を考えなければなりません。



 具体的な政策批判にもなりますが、”構造改革路線”は基本的に“一般的な“投資優遇策であり、基本的に需要側面が見落とされており、現在のような不況状態(物 産業の供給過剰状態)の時には逆効果になることも指摘せざるを得ないでしょう。
というよりもこれまでの”構造改革路線”の一方的投資優遇策が今日の状況を招いたと言っても過言では無いかもしれません。









以下次回

景気政策入門講座−10  現状での基本認識と政策提案の基本方向−1

 前回まで“不況“の基本的経済構造とその方策について順次述べて来ましたが結論的方向が解っている時にそれを徒に引き伸ばして居る事は、若干の読者諸氏にももうしわけ有りませんので、ここで判明している限りでの、景気政策にかんする現状での基本認識と投稿者のそれに対する政策提言の基本方向を述べさせて頂きたいと思います。




尚、本日付け日本経済系新聞には“ブログ記事“に対する信頼性は概ね10%程度との記事がありましたが、投稿者の判断ではそれは、

①記事を書いているのがどの程度の人間であるかわからない。

②出典等が明確に示されていない。

等による物と思われます、本投稿では、




①については別サイトで“景気政策史“を投稿中ですのでそれで判断を頂ければと思います。

②については本日まで一々出典は示して来ませんでしたが本日はなるべくそれを示したいと思います。


いきなり入門講座から結論的提案になり戸惑われる方もいらっしゃるかも知れませんが、本日までの投稿でこの経済社会の骨格的見方は概ね説明したと思いますので一定の提案提起をさせて頂きたく思います。





▼基本認識としての世界の金融資産の急増と世界のGDPの大きさとのアンバランス▼


これは日経系のサイトでやや古いデータですが、
吉田繁治氏による“量的規制緩和解除は何をもたらすか“と言う記事であきらかにしていますが、
URL http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/g/02/index4.html


2005年段階で世界の金融資産は、

         1995     2005        
世界の金融資産 6095兆円    1京3800兆円     年率9%

世界のGDP  3000兆円      4000兆円    年率3%

比率         2倍     3.45倍


と言うデータが出されています。これは本投稿でも示してきましたが“金融市場“が独立して“無制限に“拡大する事は不可能である旨述べてきましたがこのデータでいくなら “物市場“の生産高がある意味GDPですから (GDPの中には金融収益も含むので正確では有りませんが)例えば1995年の金融資産からは例えば3%で収益を上げるとするなら182兆円の金融収益を出さねばならず、

又2005年にはやはり3%の収益を上げるとすれば414兆円の金融収益を出さねばならずこれはGDP(物生産)の一割以上にもなります。現在はこれから年数が経過していますので状況はもっと深刻であると思われます。


吉田氏もその記事の中で明らかにしていますが金利の一定の上昇がおきれば“金融破たん“は明らかである としています、つまり多くの投資信託等証券が“元本割れ“を起こすであろうと言う事です。


同様のデータは通商白書2008にもあります。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun/index.html





上記のような基本認識に立って“景気政策“を提言していく為には考え方的な基本方向としては、本投稿でも示してきました様に、財市場と金融市場のバランスを適正に保つと言う目標を考え、


イ)まずは“物市場“の流通を発展させ、又、
ロ)財源を作り国債等の“償還“を早期に進める必要が有る
ハ)”富裕層、一部大企業等の過貯蓄”を減らして行く事。(これは当然ですが”お金持ちを敵視する”と言う事では有りません)


と言うべきでしょう。


これに関し日銀が昨今国債需給改善と称して買い入れ枠を拡大しましたがこれはごく短期には可能かもしれませんが行きつく先は誰でも解るように通貨膨張によるインフレへの道でしょう。






▼財源増大への道としての▼

① 法人税引き下げ競争の停止と

② 所得税累進税制強化

③ 証券課税の強化

現在“国際競争力の強化“のお題目の元にイギリスのサッチャー政権から始まった法人税率の引き下げ競争が続いています。(当然法人企業は税率の低い所に行けば収益を増すことが出来ます。

しかし世界各国で無制限にこれを行うなら法人税の引き下げは反対の局としての“個人課税“の強化を齎し、又更に所得税の累進最高税率の引き下げ競争を行うなら結果論的に“消費税“強化の道しか残りません。
これは当然、消費縮小への道であり不況増大への道でしょう。


例:EU諸国では1993年から2006年までで平均税率は38%から25.8%になりました。


参考URL(KPMG税理士法人
 http://www.kpmg.or.jp/resources/research/r_tax200611_1.html



尚、所得税累進最高税率の変化は以下の財務省資料

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/234.htm








これはOECDでも“国際間の有害な競争“として1996にしてきされ検討されてきましたが、日本政府部内文書でも“金融その他のサービス産業のような可動性の高い産業活動への税の軽課は可動性の低い活動(勤労所得、消費)に対する相対的重課となる“としています。


OECDにおける有害な税の競争プロジェクトの進捗状況について(政府)
2003年
URL http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/185.htm


このタイトルの上記文書が不明になりましたので代わりにジェトロの文書(ユーロトレンド2002.5レポート5)を挙げておきます。2011.6.15
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05000336/05000336_001_BUP_0.pdf

▼▼▼参考までに同文書の前書き部分を掲げておきます。


経済のグローバル化に伴い、企業の経済活動の可動性が高まるなか、外国からの企業誘致を目的に、税の引き下げ競争が繰り広げられている。特に所得の移転が容易な金融、サービス等の分野において、企業がより有利な税制を持つ国にシフトすることによって、課税基礎が侵される国が発生するほか、可動性の低い活動(勤労所得、消費等)の重課にも結びつき、さらには資本移動、経済活動にゆがみをきたす可能性がある。

 このような問題意識からOECDは、「有害税制」や「タックスヘイブン」などの有害な租税競争への取り組みには、非加盟国を含めた国際協力が不可欠との認識のもと、96年より租税委員会において「有害な租税競争プロジェクト」の議論を開始した。

 同プロジェクトは、「自由で均衡ある税の競争が可能になる環境の促進」を目的とし、「税の競争」そのものではなく、貿易や投資パターンをゆがめたり、税制の公正と中立を損なうような租税慣行を抑制するもので、OECD内の租税委員会に設置された「有害税制フォーラム」が実施している。





















 これらは本投稿でも以前に示しましたように典型的な“合成の誤謬“の一つであり早急に対策が必要であると思われます。

只、上記文書は果たして政府部内でどのように処理されたか不明であり、インターネット上から“抹殺“されないよう願います。(2011.6.15現在所在不明であります)









▼税率引上げ(財源確保)の為の早急な国際協調を▼

 

 
 これら上記“合成の誤謬“は


(当然、これら税率引上げは単独では実施不可能であり、他諸国との協調を図ることが早急に求められますが−

 又それの無い場合は不況の長期化を招き、場合によっては”共倒れ”と言う事態にもなりかねませんが)、


 現段階での法人関係の税率引上げは直ちには困難であっても将来的にその方向は示すべきであり、富裕階級向け最高所得税率の引上げ(日本で言えば例えば年収数億円と言った人々等)配当等の証券軽課の是正等は現段階でも実施可能と思われますし、又それが公債償却や個人消費押し上げに使われるなら中期的に当然、状況の改善
に繋がり”消費者、投資家”の心理要因を改善することに繋がる事と思われます。

 

 

 
 19世紀の国際金融史的観点からするなら当時の不況時には国際金融協調は(英仏間ではある程度ありましたが)全く不十分で恐慌時には多くの金融センター間で金利の引き上げ競争が行われた事を注視すべきでしょう。













以下次回




 

景気政策入門講座−9  “生活物資(消費財)“の需要はどうしたら増えるか。−1


 前回投稿で、不況期においては“物“市場のまずは“生活物資“の需要を拡大すべき事を述べましが、考え方としては二つの点があると思われます。

 まず所得(収入)を

イ)一般勤労者(一般的には給料)

ロ)富裕層の人々の収入(株の配当等)

とまずは考えます。




又今までは、外国、政府、中央銀行(日銀)の存在を除外して考えていましたがここで政府に登場してもらいます。




▼“消費性向“とは▼


ここでやや経済学的概念が必要になってきます。それは何かというと
“消費性向“という考えです。



これは何かと言いますと、一定の所得、収入が有る場合においてその内(税金等を除いて)のどれだけが“消費“に支出されるかと言う事です。
つまりは、ある金額の収入がある場合にどれだけ“支出“つまりは“需要“になるかを計測する為の手段です。(残額は当然“貯蓄“と言う事になります。)

 つまりこの収入一定の場合において“消費性向“が高いほど支出−購買 “需要“になる部分が多いと言う事が言えます。


 つまりは収入一定の場合に於いてどうしたら“消費性向“が高くなるかを考えれば“支出“(需要)が増えるか と言う事になります。



①累進税等による方法

これについては旧来のオーソドックスな考えでは消費性向は高額所得者ほど“低くなる“と言うのが一般的でしたが、それに対して色々な“異論“が出て他の要素 例えば“生涯の収入“等を考慮に入れるべき等の説が出されています。

結論的に言えばこれをどう考えるかで“需要を増やす為にどうするか“と言う方針が決まってくる訳で、旧来の“高額所得者ほど消費性向が低い“と言う事に異論があるということになって来ました。


これがどういう結論になって来るかと言うと旧来的な考えでは高額所得者程、消費性向が低い訳ですから、“累進税(所得の高い人ほど税率が高くなる税制)“により高額所得者から低所得者に“所得移転“させると言う考えが主流であった訳ですが、

 (仮に一国の全体の所得が給与と配当だけで合計1000億円だったとした場合、“高額所得者“から低所得者社会保障等を通じて“所得移転“させれば“総所得が変わらなくとも消費−需要を増やす事ができる“事になります)


80年代頃から最高税率を下げる方向になって来ています。(83年当時の所得税最高税率75%から現在最高税率では40%です)




しかし、これについて投稿者が政府関係の統計等を見た範囲では77年の経済企画庁の調査結果で昭和38年ごろより48年ごろまでの所得の階層別(収入の高低で区分する)調査で一貫して高額所得者ほど定説どおり消費性向が低いと言う結果が出ていますが、最近はそのような調査が殆ど行われておらず、その一方で最高税率の引き下げだけは着々と実行されています。


 これが何を意味するかは読者諸氏の想像にお任せしますが、私見を言わせていただければ、常識的に高額所得者程、“消費性向“が低いのは当たり前と思えます。



 例えば、月収30万円の家庭と月収300万円の家庭でどちらが“多くの割合で“生活物資にお金を使うか考えてみれば分かると思います。




 

 但し“私見“に於いては月収300万円の人が本当に“高額所得者
“であるかは後述したいと思います。






社会保障等による方法

 次に同一所得で支出 ”生活用品への需要”を増やす方法−消費性向を上げる方法は、常識的にも解りますが、社会(経済的に)を安心して過ごせる様にすると言う事です。


つまり、生活上の将来を安心して生活できれば、当然”貯蓄をむやみやたらに増やす必要は無くなる”わけで、要は社会保障(医療、年金、教育等)を充実させる事が挙げられるでしょう。当然、そのようにすれば消費性向は全世代で上がる事になるでしょう。これは何らか統計データを持ち出すまでも無いことでしょう。


この場合、一定の予算の組替え、ないし税収の増加が必要になりますがそれについては別途述べたいと思います。2008.12.21追記






以下次回

景気政策入門講座−8  “物の性質“により購買者は違う

 

 予め若干お断りして置きますが、本サイトは当然、特定の政党を支持する立場には立ちません。

 

 投稿者の私見に於いては“経済学は科学“であり、それによって人々の生活が良くなるものであり、従って“何らかの先入的観念“では当然無く、例えば100円の物を200円で買う人はおらず、又3%の利息で100万円借りたら一年後には103万円返さなければならない これは当然の事であり経済学はその立場に貫かれていると思います。又したがって逆に誤った“理論、政策“についてはたとえ政治的に何党の政策(当然政党名は出しませんが)であっても本サイトの上では批判の対象と成る事をお断りしておきます。

 
 (コメントは如何なる“理論的“批判もお受けいたしますので自由に投稿してください)



 



 前回までの投稿でこの市場社会は基本的に“物市場“と“お金の金融市場“に分かれており、それは“物市場を土台に“繋がっており、“景気政策“の目標はその循環を円滑にする事であるとしました。

 
 したっがて又、金融市場がそれのみで独立的に“無制限に“大きくなる事は有りえないわけです。

又物市場の一国内の需要 供給能力状況を確認するのに、以前では“需給ギャップ“、現在では“GDPギャップ“というデータを集めている事、そして一般的に日本では概ね供給能力過剰、特に不況期にはアメリカ等も含み全く供給力過剰状態に成る事を述べました。

 

 上記より、考えの第一として、まずはこの土台である“物市場“の供給能力−需要不一致状態を併せる必要がある訳ですが、


考えるまず前提として“物“の性質を二つに分けて考えた方が考えやすいと思われますので二つに分けながら考える事とします。
それは何かというとこの市場型経済社会に出てくる経済主体(登場人物)は大きく二つに分かれるからです。

まず第一は法人、企業であり
  第二は、勤労者、個人 です。



つまりそしてそれに対応するのが、
  
イ) 生産の用に使う機械等生産設備と

ロ)一般に消費される生活物資です。


 何故かと言えば登場人物、法人企業は生産設備を買いますが、他方の個人、勤労者は生産設備は買う事は有りません(個人企業を除きます)





▼物の性質により購買者は違う▼


まず供給能力と需要の不一致という場合、

1総額が合わない
2品目別区分が合わない



の二種類が考えられますが過去の“GDP“の内容を見ますと(1980-2004)からすると生産設備部分(逆に言うと投資)部分の変動がその5%近くもあり景気変動−“不況“の大きな要因となっていると思われることです。


しかしながら常識的に考えるなら“生産設備“は消費物資の生産の物の為であり、それ自体が独立して“無制限に“大きくなる事はありえません。又一旦不況状態になると企業の給与等は下がる傾向にあるわけで当然、消費物資、生活物資に対する需要も減る事となります。


又、上記に述べましたように”不況期”には”供給能力過剰状態”にあるのであり、その時点で供給能力を拡大することに繋がる”生産設備”の増加に繋がるようなことは物を考える上で順序がおかしいことは誰でも解ると思います。




 従って全体の需要を増やす為には“まずは“生活物資の需要を拡大する“
事が必要になるのはある意味当然でしょう。



では“生活物資(消費財)の需要を増やす為にはどうするか。






以下次回

景気政策入門講座−7 “景気政策“の目標とは

 

 前回投稿で“物生産、市場“に一般的に供給力過剰の状態が有り、それは“不況“の時には明確に拡大すると述べましたが、ではどうするのかと言えば、その他方で一般的に“不況“の時には“金融市場“にも“お金“の流入が減る事は前にも述べましたが、ここで念頭に置いておかなければならないのはやはり以前述べましたように、




■景気政策の目標とは■

“物市場“と“金融市場“は物の作る過程

イ)
お金−生産材料、働く人を雇う−生産−商品を作る−販売する−販売代金

と言う過程を踏み、その間に




ロ)
① 設備投資資金等の積立
② 企業の日常運転資金
③ 雇われた人達の当座使わない部分
④ “富裕層“の人達の余裕資金

等が“金融市場“に流れ、他方借入する 企業、個人等によりそのお金が金融市場から出るという一連の流れがあると言う事を念頭に置いておいてもらいたいと言う事です。



 つまりはこの“物市場−金融市場の連関を正常に機能させる“と言う事が“景気政策“の目標になるという事です。

これは基礎はやはり“物市場“に有ると言うべきであり、金融市場自体が“独立してそれだけで大きくなって行くと言う事は有り得ない“からです。これは一見当たり前の事ですが、見失いがちになるところです。





 では不況の時には物市場では一般的に“供給能力が過剰“言葉を変えれば需要が減ると言う現象が起きることは述べましたが、金融市場ではその“物市場“での不況の状況を元にどういう事が起こるかと言えば、一般的には


① 販売不振からくる資金回収の遅れ
② 上記からくる運転資金の不足
③ それらから影響された働く人達の給与の減少

等から金融市場にはお金が入って来なくなります。



つまりはこの市場体系を円滑に動かしてゆくにはやはりまず“物市場“を円滑にしてゆく事が基本にあるというべきでしょう。





▼物市場の需要供給を合致させる為の前提▼

 
 
 ここで一つ大事な事を述べなければなりません。それは何かと言えば上記のようにまず物市場の需要供給を合致させると言いましたが“単に合致させるだけ“ならば“供給能力“を減らしてもできる事に理屈的にはなりますが、



 一般に“経済政策の目標“は最終的にはそこに居る国民の皆さんの“生活が良くなる“と言う事に連結させなければならないという事です。 

 
 これは最近に於いては大きなスローガンを立てる割には国民の生活が良くならないということも間々有り勝ちであり注意が必要な所ですが、そういう意味では、昭和時代にあった”所得倍増計画”と言う目標は評価は色々有るかもしれませんが解りやすかったといえるかも知れません。



 
 つまりは不況に入る前に動いていた(稼動していた)企業等を“基本的には“稼動させてゆく方向で考えると言う事です。それが無いと失業の大幅な増大となってしまうという事です。これは経済学的用語で言うと“完全雇用水準“を目指す。と言う事になります。

 
 但し、誤った政策が長く続いた場合に於いては修正に多くの過程が必要になる場合もありその場合、一貫した産業政策雇用政策、社会政策が必要になる場合も有りえる事になります。その財源はと問われればOECD等にも指摘されている“国際間の有害な競争“の一つにも思われる“国際間の法人税の税率引下げ競争“を止めさせる事も大きな一つと思われますがこの点に付いては後述したいと思います。








以下次回