景気政策入門講座−11 現状での基本認識と政策提案の基本方向−2

 政策提案の基本方向の一回目で、まず、財(物)市場(概ね的にはGDP)と金融市場の成長アンバランスを国際協調を旨としながら克服しなければならない事を述べました。


第9回の投稿で物市場の一般的供給能力過剰状態を克服する為の方策について述べました。
その方法としては、

所得税累進の強化
社会保障整備を行う事

これらを実施する事により、一般的“消費性向“を上げ、需要を拡大する事が可能な事を述べました。又そこにおいては一定の予算組み替えも必要である事も述べました。(不急な軍事費の削減、過度に作り過ぎている空港等 例えば採算が危ぶまれる関西等 の予算を削減し教育費等に振り向ける。)



又、中期的にはやはり国際協調を旨に財政再建が可能である事も述べ、又それは日銀等中央銀行の“国債買取“等の“危険な道“を防ぐ事につながってく事についても述べました。


ここで失業が拡大して行くであろう事も考えながら、政府による一定の
“産業誘導“−“投資誘導ないし拡大“の道について考えてみたいと思います。





社会保障、雇用拡大、環境保護になる“産業“への投資へ▼


 不況状態と言っても“投資“が全然無くなる訳では当然無いと言う事が一般的でありますから、何らかの新規投資はある事になります。

そこで、投資を行い産業を興してゆくなら不況時には、

①雇用効果が大きい物

②社会に直接役立つ分野

③一般的に”物 市場”(生産能力)は供給能力過剰であるので、”サービス的分野”への投資に振り向ける事が必要と思われます。
(第6回投稿参照)




である事が望ましい事は言うまでも無い事でしょう。
しかし“投資“自体が民間で行われるものが多い訳ですから一般的“倫理観“だけに訴えて決定するわけには行かないでしょう。

政府が行うのであれば社会的目標で行う事も可能と思われますが。




そこにおいて、民間企業がやっても採算が取れる分野と言う物が基準になると思われますが、そこにおいて政府が上記予算組み換え等行いながら産業を上記①、②、③を満たす分野に誘導すると言う事が考えられます。

・・・財源論として・・・

なにをやるにもお金が掛かりますから、この場合も予算が当然必要なわけでそれについては、

イ)上記で述べました“予算組み替え“
ロ)法人税率は“国際協調“があるまで弄れないとするなら、(但し大規模企業等に一定の付加税を負担してもらうのは可能かもしれませんが)、富裕階級(年収数億円と言うような人々)に有る程度の超過的所得税を負担して頂くのも考えと思われます。これは以前から言っていますように“倫理観“の問題では無く、過度になった金融資産を削減する一方策でもあります。


 余談になりますが、一般的に所得税等“累進税“と思われて右肩上がりの税率曲線になっていると思われていますがこれは既に1970年代からの研究で大よそ年間収入数千万円の人々から上の収入の人々の税率は逆に右肩下がりとなっている事が一貫して証明されています。
これは証券収入等の“分離課税“の制度による物です。
(参照:都市財政改革の構想、現代の財政、経済財政ハンドブック)





 上記等により予算も確保しながら、雇用確保につながり又社会保障
もなる分野に投資を誘導すると言う事ですがこれについては、やや意外な考えと思う方もいらっしゃるかも知れませんが、“社会保障分野“も“産業“であると言う事です。

社会保障と言うと何らか“消耗的 非生産的“なものと考える方も多いのですが、“軍需産業“と言う言葉も有るように国民にとって必要な物であり、“産業的効果“のあるものはやはり“産業“である訳です。



つまり、社会保障に“投資“する事で当然雇用効果もありますし、またそれは国民生活に直接役立つ訳です。雇用効果について言えば社会保障分野は雇用効果が極めて他産業に比べて大きいというデータも多く有ります。

“厚生労働白書“等でもデーターが出されていますが、“雇用誘発効果“について

他産業に比べ

介護が順位①位
社会福祉が③位
保健衛生が⑧位

となっており介護等は通信等に比べ5倍近い雇用誘発効果があるとされています。 (全56部門中  平成20年版厚生労働白書 P30)

これは他の所でも多く出されている物であり、特に不況の克服の為にも有意な産業であるといえると思います。



これらは、不況時の対策としての一般的インフラストラクチャに投資する(公共事業への投資)という固定概念を応用的に考える事も必要である事を示しています。






 又、投資機会を失っている(需要見込み)という事で言うなら環境保護技術産業も危急に求められる将来有望な産業であると言うべきで、政府は積極的に産業誘導すべき(税制優遇等もしながら)であると思われます。これらの産業誘導には費用がかなり掛かる事も明らかで、”国際協調の成否”に掛かっていると言っても過言ではないでしょう。




これら”社会保障産業等”への投資は予算手当等しながら行けば国民内に於いても当然、需要も強いものであり、”成長産業”になる事が見込まれます。






▼但し、“一般的な“物生産の為の投資は二重の効果を持ちます。▼


これは何かと言えば”投資”それ自体は”需要”になりますが、しかし
それは完成されれば”供給能力”となるのであり、ある意味不況状態に拍車をかける事となります。(こういう事を経済学的用語では”投資の二重効果”と呼びます。)


従ってよくある一般的な”物 産業への優遇 投資優遇(減税等)”は逆効果になる可能性が否定できない事を考えなければなりません。



 具体的な政策批判にもなりますが、”構造改革路線”は基本的に“一般的な“投資優遇策であり、基本的に需要側面が見落とされており、現在のような不況状態(物 産業の供給過剰状態)の時には逆効果になることも指摘せざるを得ないでしょう。
というよりもこれまでの”構造改革路線”の一方的投資優遇策が今日の状況を招いたと言っても過言では無いかもしれません。









以下次回