景気政策入門講座−12 現状での基本認識と政策提案の基本方向−3

前回までで現在の問題である景気政策の基本方向について述べて来ましたが、若干の読者の方々もお気づきと思いますが、“国際協調“の有り方について、若干の方向性について補わなければならない事が有ると言う事です。




▼国際間の“国際収支と金融政策−金利政策のあり方▼




 つまり、多くの方もお気づきと思いますが、アメリカを中心としたこの世界経済の有り方として、ご存知のようにアメリカは膨大な貿易赤字を中心にした国際収支の赤字を出しています。


又これは何方も解ると思いますが、国際収支の赤字は何らかの形で埋められなければならないという事です。


現状の世界経済はアメリカを中心に、日本、中国、EU等の産業センタ
ーから成り立っています。

貿易赤字について言えば最近についてはそれらの地域が黒字を抱えるという構造になっていると言う事です。


従ってご存知のように日本を筆頭にその経常収支を埋める為に“資本収支で黒字を構成する“という構造になっていると言う事です。

統計データは沢山あると思いますが一つだけ掲げておきます。
財)国際貿易投資研究所 国際比較統計
http://www.iti.or.jp/


 

そこから問題になるのは資本収支は“基本的に“金利差に大きく反応するという事です。従って今回の不況のような時にアメリカが“低金利“の方向を採ると他の経常収支黒字諸国はそれよりも“低い“金利を要請される事になり、つまりは、政策手段が制限されるという事になります。


ここから言える事は、国際的協調と言う時になるべく“アメリカに金利政策以外の手段“を使うように働きかける必要が有ると言う事です。
これはこれまで述べてきましたような方策を採れば財政政策を取る事が可能である事は読者諸氏もお分かり頂けると思います。




又、“短期的資金“の動きに対しては、“トービン税“のような手段を講じ、撹乱を防ぐ事が必要でしょう。これらは、何の“学派“であっても、経済学が“科学“である以上、取るべき手段には合意が可能であると思います。





・・国際競争力は強ければいいか?・・・

 これらは更に考えるなら各国の“内需“喚起の課題にも結びつく問題であり、世界的な経済構造全体の問題にも関係する問題では有り、それらも考えながら全体の均衡をも考える必要が有ると言うべきでしょう。

 つまる所、“国際競争力“とは何か?という問題にも関連します。つまり金本位制等の元では輸出によって稼いだ外貨(金)はその国に持ち帰れますが、現在のような“国際的不換制 ドル(ユーロ)本位制“の元では
貿易黒字は、

①為替の上下によって調整されてしまうか
(その場合、輸出企業は大きな変動に曝される事になりますが)
②反対側の資本輸出等により“相殺“される必要が有る。

という事になり、“強ければよい“という事にはならないわけです。詰まる所、“国際競争力“の国際的調整が必要であるという事です。







これら金利調整や前項での税源確保策等の“国際協調“が不調におわれば、負担の押し付け合い、市場の狭般化等により、不況の長期化や又昨今の日銀が国債買入れを多くしたり又CPの買入れを行っているように極めて危険な道に行く可能性が大であると言うべきでしょう。







▼自然環境問題 温暖化防止策は緊急な課題▼

 

 更には、愁眉の課題である地球環境問題でのCO2削減等の課題の遂
行に重大な障害が生まれるというべきで全く危機的状況としか言いようが有りません。

 IPCCの4次報告でも今世紀末、2℃の上昇で生物の1/3が絶滅するとも言われています。(同報告では最大6℃以上も上がる可能性があるとしています)緊急な手が打たれなければ大変な事態になる可能性が否定できません。


 地球環境問題では“消費社会“とは何であるか?つまり必要以上に生産していないか?

もし本当に必要なだけ生産するなら総労働時間ももっと短縮出来る訳ですし、そうすれば“自分の生活“という所に使う時間も増やす事が可能であると思います。つまりは大きく言うなら“人生とは何か“という問題にも行き当たる事になるわけです。その有り方も考える必要が有るという事になるでしょう。


 




又、“消費社会“と言われる一方で一日一ドル未満で暮らす人々がこの地球上で約十一億人 五人に一人 と言われています。この問題と上記環境問題をリンクさせ解決させなければならないのが現在の我々の課題であります。一つの参考データとして日本で一番の資産家の総資産は約七千億円とも言われています。我々がこの問題をどう捉えるべきか迫られている問題では有ると思います。

 “経済学的に“考える事が肝要であると思います。つまりは基本は“等価交換“そして“貸したお金には一般に利子が付く“という事でしょうか?

 又、しかし私企業に調整できないものを調整するのが政府や関連国際機関でしょう。







尚、参考文献は色々挙げられる事が出来るとは思いますが、下記の物を一応挙げさせて頂きます。



マルクス資本論
ケインズ:雇用・利子及び貨幣の一般理論
岡本正他:経済原論講義
林田睦次:ケインズ[一般理論]研究50年史
林保美:サプライサイド経済学
松村文武:債務国アメリカの構造
又、特に参考文献は挙げませんが、一般に特に近代以降の経済史的事実は前提になると思われます。







 それらの事を最後に指摘させて頂いて本稿を終了させて頂きたいと思います。尚、途中他にも書かなければならないことも有りましたが、なるべく“自分の頭で考える“という事を基本に皆さんに考えて頂きたいと思います。