景気政策入門講座−9  “生活物資(消費財)“の需要はどうしたら増えるか。−1


 前回投稿で、不況期においては“物“市場のまずは“生活物資“の需要を拡大すべき事を述べましが、考え方としては二つの点があると思われます。

 まず所得(収入)を

イ)一般勤労者(一般的には給料)

ロ)富裕層の人々の収入(株の配当等)

とまずは考えます。




又今までは、外国、政府、中央銀行(日銀)の存在を除外して考えていましたがここで政府に登場してもらいます。




▼“消費性向“とは▼


ここでやや経済学的概念が必要になってきます。それは何かというと
“消費性向“という考えです。



これは何かと言いますと、一定の所得、収入が有る場合においてその内(税金等を除いて)のどれだけが“消費“に支出されるかと言う事です。
つまりは、ある金額の収入がある場合にどれだけ“支出“つまりは“需要“になるかを計測する為の手段です。(残額は当然“貯蓄“と言う事になります。)

 つまりこの収入一定の場合において“消費性向“が高いほど支出−購買 “需要“になる部分が多いと言う事が言えます。


 つまりは収入一定の場合に於いてどうしたら“消費性向“が高くなるかを考えれば“支出“(需要)が増えるか と言う事になります。



①累進税等による方法

これについては旧来のオーソドックスな考えでは消費性向は高額所得者ほど“低くなる“と言うのが一般的でしたが、それに対して色々な“異論“が出て他の要素 例えば“生涯の収入“等を考慮に入れるべき等の説が出されています。

結論的に言えばこれをどう考えるかで“需要を増やす為にどうするか“と言う方針が決まってくる訳で、旧来の“高額所得者ほど消費性向が低い“と言う事に異論があるということになって来ました。


これがどういう結論になって来るかと言うと旧来的な考えでは高額所得者程、消費性向が低い訳ですから、“累進税(所得の高い人ほど税率が高くなる税制)“により高額所得者から低所得者に“所得移転“させると言う考えが主流であった訳ですが、

 (仮に一国の全体の所得が給与と配当だけで合計1000億円だったとした場合、“高額所得者“から低所得者社会保障等を通じて“所得移転“させれば“総所得が変わらなくとも消費−需要を増やす事ができる“事になります)


80年代頃から最高税率を下げる方向になって来ています。(83年当時の所得税最高税率75%から現在最高税率では40%です)




しかし、これについて投稿者が政府関係の統計等を見た範囲では77年の経済企画庁の調査結果で昭和38年ごろより48年ごろまでの所得の階層別(収入の高低で区分する)調査で一貫して高額所得者ほど定説どおり消費性向が低いと言う結果が出ていますが、最近はそのような調査が殆ど行われておらず、その一方で最高税率の引き下げだけは着々と実行されています。


 これが何を意味するかは読者諸氏の想像にお任せしますが、私見を言わせていただければ、常識的に高額所得者程、“消費性向“が低いのは当たり前と思えます。



 例えば、月収30万円の家庭と月収300万円の家庭でどちらが“多くの割合で“生活物資にお金を使うか考えてみれば分かると思います。




 

 但し“私見“に於いては月収300万円の人が本当に“高額所得者
“であるかは後述したいと思います。






社会保障等による方法

 次に同一所得で支出 ”生活用品への需要”を増やす方法−消費性向を上げる方法は、常識的にも解りますが、社会(経済的に)を安心して過ごせる様にすると言う事です。


つまり、生活上の将来を安心して生活できれば、当然”貯蓄をむやみやたらに増やす必要は無くなる”わけで、要は社会保障(医療、年金、教育等)を充実させる事が挙げられるでしょう。当然、そのようにすれば消費性向は全世代で上がる事になるでしょう。これは何らか統計データを持ち出すまでも無いことでしょう。


この場合、一定の予算の組替え、ないし税収の増加が必要になりますがそれについては別途述べたいと思います。2008.12.21追記






以下次回